行政書士って仕分け(仕訳)業?
――あるスーパーでの無料法務相談会
札幌支部 杉本 康則
辞書を引くと当然ながら、仕分け「区別・分類すること」、仕訳「簿記で、貸方・借方を区別して記入すること」である。
今日も時計の針が0時50分になろうとしている。私はいつものように慌ただしく、相談用のテーブル、イスの雑巾がけをし、案内用のポスターを貼る。
こんな相談会ももう直ぐ満4年になる。中堅スーパーの2階の通路脇で仲間の先生と3人でスタートしたのが4年前だ。今は、私ひとりで毎月1回の決った日の13:00から18:00を相談会としている。
スーパーということもあってか、相談者の7割は中高年の女性だ。時の経過と共に相談内容も移り変わっているように思う。「格差社会」とマスコミが囃し立てる前から、相談者の声としてその現象は聞こえていたし、「法テラス」制度(この制度が庶民の本当の助けになるかどうか分からないが)が具体化する前から、このような個々人にとって身近で気軽に寄れるセーフティネット窓口設置の声も、相談者とのやり取りの中で多く聞こえていた。これは行政窓口・相談機能への不満・不足、そして一般市民の各種負担増が将来の不安と重なり合うからであろう。
最近特に気になる相談傾向は、悪質商法・金銭貸借問題・保証問題・相続トラブル等の経済問題よりも親子・夫婦間のもつれ、扶養トラブル・介護問題、他人とのコミニュケーション能力問題、自分の生き方に迷う中高年等々の相談内容が多くなったように思う。
・・・最近の傾向3題・・・
?息子や娘の家を新築するために、孫達の教育費のためにと言われてお金を出して(本人は貸したと思っている)しまった。高齢で生活に困ったので、子供達に請求したが全く無視されてしまい、「子供達をぶっ殺してやりたい」と興奮して相談にきた80歳のおばあちゃん、どうしただろうか?私の話が少しでも参考になり、落ち着いて子供さんと話し合いの機会を持てたかな!!
?職人のご主人の給料が減り、生活費の不足を補うことから多重債務に陥った夫婦、早く自己破産手続き取ることを勧め弁護士に繋いだが、ある種几帳面な奥さんの精神状態が心配だ。完全に鬱病状態だ。何度か相談に来たり電話があったが、その後病院に行く機会を得られただろうか!!
?娘夫婦と二世帯住宅を建て住んでいた実直なサラリーマンOB氏。婿殿の事業資金の保証人になったが、倒産に遭遇し、娘夫婦は離婚し、かわいい孫と共に行方不明。保証協会扱となった保証債務についての相談。70歳を超えた相談者は悔しさと不安が入り混じり、私の前で涙を流されてしまった。私の多少無謀なアドバイスを持って、後日、保証協会へ話し合いに行き、取敢えず相談者の希望通りになったと、電話の向こうで何度も頭をさげる様子が伝わり感慨深いものがあった。だが、家も娘も孫も失った状況になったこれからの老夫婦の生きがいはいずこに・・・。
我をして、「仕分け(仕訳)屋行政書士」「市井のセーフティネット屋行政書士」「カウンセリング屋行政書士」と自らを呼んでいる、そんな相談員である。
ITを駆使して情報を取れない世代、国・地方公共団体の発信情報をなかなか理解出来ない世代、厳しい経済環境で老後生活を送っている人々、老老介護で精神的・肉体的に参っている人々。身近で気軽に相談できるセーフティネットを渇望していることを肌で感じる。
相談日の夜は魂が抜き取られたような感じになることがある。正直シンドイと思うこともある。でも何とか続けられているのは、やはりいろいろな人との出会いかもしれない。
経済的(困難)な問題で相談に乗っていた相談者が再訪され「先生、これ飲んで!」とポンと相談テーブルの片隅に置かれるお茶の1本がうまい。
「先生に助けられました」という、相談者のお世辞半分の声に乗せられて続いているのかな〜。スーパーの店長はこの間2人も代わったのに。
琢磨賞 最優秀 杉本 康則先生
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2006.11.30 11:38:25